皆さんは、人に見せる絵を描くときに、大事なことは?と問われて何を考えますか?
私は、見る人に対して、自分の絵のここが描きたかった、こういうアイデアや色使い、シチュエーションが伝えたかったというようなことを、分かりやすく表現することだと考えています。
絵を描くときは毎回そのことに結構気を遣っていて、私のXのメディア欄の小さいイラストを眺めるだけでも、原作を知っている方なら、あ、これはあのゲームのキャラの絵だ!という風に分かるような絵を描いてあるつもりです。複数人のキャラが居たり、背景付きでもイラストが見栄え良く、分かりやすくなるように考えて描いています。
技術はそれなりに高いのに、よく見ないと何がどこに描かれているか分かりにくい絵や、キャラがぽつんと描いてあるだけで何を強く表現したいのか分からない絵、イラスト全体の描き込みや密度、コントラストなどが均一すぎて、魅力がイマイチ伝わりにくくなっているな、と感じる絵が、SNSで結構流れてきます。ここでは見やすい絵、分かりやすい絵の描き方とはなんなのかを考えて、好きなことを書いていこうと思います。
見栄えする絵、見せ場のある絵とは?メリハリって何という話
先日、SNSを眺めていると、2枚のイラストの比較と、それについて書かれた作者の考え的なポストが流れてきました。
2枚とも、マイクを持って歌を歌っている女の子の、同じイラストだったと思うのですが、片方は背景が真っ白で何も描かれていないもの、もう片方はエフェクトだったか効果線だったかを、勢いや凄みを出そうとして描き込んであるものでした。それに、うっすらライブハウスだったか、歌うためのステージ的な背景も描いてあったかもしれません。
で、ポストをした本人は、白背景の方が、伝えたいことがダイレクトに伝わるので、背景にごちゃごちゃ描くよりも良さげなんじゃないか?みたいなことを仰っていたような気がします。なるほど確かに、効果線などの背景が描いてある方は、キャラクターが、勢いよく描いた背景に埋もれてしまっているように感じて存在感が薄れ、白背景の方がキャラも目立ってインパクトがあるようにも感じられたのです。
まず先に言っておきたいのが、私はこの人がポストした内容が間違っているとか言いたいわけでも、攻撃したいわけでもありません。ただ、このポストと2枚のイラストを見たときに、「複雑な背景とキャラを上手い加減で分離させて、キャラの方をしっかり目立たせる工夫が、まだ足りていないな……」と感じたのです。そういった技術がまだ未熟なのを、白背景の方が分かりやすい、という風に思い込みすぎてしまうのは、もったいないのではないか、ポストを見たその他の人にも、白背景のみが優れていると、思ってほしくないなというのがありました。
例えば、女の子の顔が好きなことをただ伝えたい、歌うときに大きな口を開けている絵が好きとか、この描き込んだ目を見てくれ!みたいなことが表現したいだけな場合、複雑な背景があるより、でっかくそれを描いて背景は真っ白や単色塗りつぶし、という感じの方が、絵を見た人に伝わりやすいでしょう。もしくは効果線や記号、抽象背景で、見せたい場所を強調したり、視線誘導してやる最低限の背景だけ描くとか。
でも、歌っている女の子と一体化したようなまわりの熱気や、描き手の想像している会場の雰囲気や照明の具合、臨場感も表現したいなら、真っ白ではなく、なんらかの背景を適切に描き込んでやったほうが、おそらくは良い絵になる気がするのです。自分の表現したかったことを見た人に伝える補助としての役割、エモさ、何らかの感情を抱かせる助けになると思うわけです。まだ拙いところもありますが、私の絵を例にして解説します。

上の絵はドラゴンクエストⅪの女武闘家、マルティナを描いたものです。ゲーム内の彼女は長い髪を束ねた姿でいるのですが、それをほどいた状態のマルティナを描いたらイラストとして映えるのではないか、と思ったところから絵を描き始めました。
髪を目立たせるために斜め後ろから見たマルティナを描こう、髪の流れに変化が欲しいので毛先が地面について広がった感じとかを描いて、さらに可愛く、美しく見せるために女の子らしい座り方をさせよう、静けさも表現したいので大きく髪をなびかせるのはやめておこう、というようなことを考えて、ポーズやアングルを決めていきました。
髪をほどいたマルティナを魅力的に描きたい、ということなら、こうして描いたキャラだけを画面に対して大きめに配置するだけで、まわりは白背景でもいいとは思うのです。ただ、私は自身の絵の満足感、少しずつの上達、手癖でも色々描ける力を上げるためなどの理由から、なるべく何らかの背景を描くようにしていまして、じゃあこのマルティナに背景を足してさらに良く見せるためにはどうしたらいいのか?と考えたわけです。
私はイラストの背景として花や植物を描くのがわりと好きでして、それほどぎっちり写実的に描かなくても、ささっとラフに描くだけでも華やかな雰囲気が添えられるので、今回もそうすることにしました。
黒髪と対照的な赤いバラにしよう、幻想的な雰囲気を出したいので、一面に咲き乱れるバラを見渡した絵にしよう、昼とも夜とも分からないような空間にして、少し光がさしてて、花びらが舞い落ちていたらエモいんじゃないか?みたいな感じで絵に情報を足していきました。綺麗だけどどこか非現実的な、不思議な絵になったんじゃないかと思います。Xにあげた時の反応も良くて嬉しかったし、とてもありがたかったです。
絵のメリハリや分かりやすさという点では、例えば花びらは画面全体に均一に舞わせるのではなく、描いてある場所とまったく描かない場所をきちんと分けることで、画面全体に迷彩を施したような感じにならないように気を付けてあります。それと、奥まで見通した感じも出したかったので、キャラの頭部の輪郭を邪魔するようなものを描かず、そのまわりをすっきりさせ、その先に沢山の花が咲いているのを見せるようにしました。
また、髪に注目させたい絵ですので、頭頂部に強くハイライトを当て、上の方ほど艶やかに塗り、下に行くにつれてシルエットのみに近いような単調な塗りへと、グラデーションにしてあります。これは手抜きももちろん兼ねていますが、単色で塗りつぶした箇所に隣接する部分である、左足を少し目立たせてこういう風に座っていますよと伝えたり、少しだけ描き込んだ前景のバラの花を見せたり、ちょうどその間に平面的に塗りつぶした髪があることで絵の中に少し粗密が生まれるとも思うのです。
バカでかいサインと手前のマルティナの頭の間に黄色い光の層を足すことで、マルティナの横顔が際立って見え、空気遠近的に遠景のバラを黄色く霞ませることで、絵に前後感、奥行き、空間の広がりを感じさせようとしてあります。マルティナの足元に適当でいいので影を描き足すことで、そこに座ってる感じを強調できます。
このように少し背景を足すだけで、白背景だけでは成しえなかった雰囲気を、見た人に伝えることが出来るということが、分かっていただけたでしょうか。
ときどき耳にする、「背景無しの絵の方が伸びる」という話も一理あるとは思いますが、キャラを引き立たせる、キャラの印象を薄めないどころか、魅力を増す背景を添えることが出来る人が少ないだけだ、という考え方もできます。
難しい、複雑で緻密、写真のような背景が描けなくても大丈夫です。私も描けません。ですがワンポイントの背景からでも添えられるようになってくると、絵を描く楽しさの味というか、そういうのが増えてくるかもしれません。背景について描いた記事も貼っておきます。

イラストの背景にキャラが埋もれるときは
頑張って描き込んだ緻密な背景のおかげで、キャラが目立たずに何の絵なのか分かりにくくなってしまうという方も多いと思います。2人以上を描いた絵になるとゴチャっとして魅力が出せない、という人も多いでしょう。
私が考えるその理由として、キャラ同士や背景との線の強弱が同じだったり、色の濃さ、鮮やかさやコントラストの付け方が同じだったり、背景やキャラの境目の描写が上手くいってないことが挙げられると思います。
再び私の絵を例に出して気を付けたことや考えたことを書いていきます。

上の絵はファイナルファンタジー6のロックというトレジャーハンターの絵です。不死鳥と、その力が込められた、魔石と呼ばれる石が背景として描かれています。
全体的に彩度が高く、チカチカとする絵ではありますが、フェニックスとロックはそれなりに境界が分かりやすく描いてあり、ごちゃごちゃした中に埋もれてはいないと思うのですがいかがでしょうか。
魔石は一番奥の、外側が緑で中心が赤やオレンジのごつごつした部分がそうなのですが、それが魔石だと言われなければ、ゲームを知っている人でもわからないかも知れません。ただ、ロックやフェニックスの輪郭や存在感を邪魔する感じにはなっていないと思います。ロックの顔の右にある細かい模様は石の質感のつもりで描いたのですが、描いてる途中で楽しくなってきてガリガリ描き込んでしまいました。この模様が目立つと自然とすぐ横のロックの顔に目が行くので、悪くはないと思います。
ロックとフェニックスの鮮やかさが同じくらい?なので、上手く描かないと一体化してしまって分かりにくくなるところを、ロックは黒や青、フェニックスは赤や黄色でまとめることで、対比色っぽくして両者が混ざらないように気を付けてあります。それと、フェニックスの輪郭線をロックにくっつけないようにしたり、魔石とフェニックスの境目の白く飛ばした部分と、ロックの輪郭を被らせて、それぞれの境界が分かりやすくしてあります。ロックの周りが白く飛んでいるのでパッと見で彼の顔が目立ちます。
ロックの手前に突き出した右手の手袋と、その奥の上着の色が似ているため、前後感を分かりやすくするために奥の上着の色を薄めたりしてあります。真っ黒いシルエットだけにしたときにどんなポーズなのか分かりやすいくらいなのが一番いいのですが、まわりの背景との位置関係もあって、この時はこういうポーズで描きました。薄くした部分とそうでない部分を、グラデーションにしても良かったかもしれません。もしくは光源や陰影を調整して、もう少し自然に前後を分かりやすくもできると思います。
ちなみに同系統の色でキャラと背景を描く場合は、キャラを濃い色で、背景を薄く淡く描くことで境界を分かりやすくしたり(薄く=ぼかせということではありません)、いっそキャラ全体を目立つ色で縁取ってしまったり、背景とキャラの間にレイヤーを作って、境界付近にぼかした色を薄く乗せたりといった手段も有効です。背景の方には輪郭線を描かない人も多く、それもキャラが背景に埋もれない手段の一つになるでしょう。
イラストのキャラと背景がなじまない キャラが浮いて見える
キャラが埋もれるのとは逆に、これで悩んでいる人も多く見る気がします。
原因はいくつか考えられるでしょうが、まずはキャラと背景の画風が全然合ってないパターンについて。デフォルメが効いていたりして特徴のある可愛い感じのキャラなのに、背景は写真を貼ったようにリアルでちぐはぐだったりする場合。キャラが可愛いなら背景もある程度デフォルメしてやらないと、噛み合わずにキャラが浮いた感じになるかもしれないということです。反対にキャラがリアルなら、あまりにデフォルメが効いた背景は合わないでしょう。
でもこれ、背景にキャラが埋もれるよりはマシだと思うし、例えば自分で撮った写真を加工してリアルめな背景として使い、キャラは自分の絵柄でかわいく描くとかも、表現方法としてはそれほど悪いものではないようにも感じます。直したいと思うなら画風をある程度キャラに寄せた背景にする必要があるということですね。
あとは、光源と影の付け方、それを表現する色が、キャラと背景であまりにも合っていなかったりする場合とかでしょうか。光と影を完璧に正確に描く必要はないでしょうが、絵全体で同じような光と影の方向と色に統一してやるだけでも、かなり馴染んで見えると思います。
しかし注意点として、現実の写真とかでも、何も考えずに撮ると背景に人物が溶け込んでしまうこともあるように、馴染ませすぎてキャラの印象が薄れないように注意したいところです。
描き込みの多いところと少ないところを作るのも方法の一つ
余白、隙間が全然ない絵、意図的に省略したり、簡単な描写にとどめた部分がない絵って、絵としての面白さを一つ捨てているとも考えられると思うのです。
もちろん全体的にゴチャゴチャさせるというのをテーマにして、それはそれで良いとは思うのですが、ゴチャゴチャした絵こそ、意図して作った少しの隙間が効果的だったりもします。
何も描いていないところが目立つかどうかは、余白の位置と割合によります。全面びっしり描き込まれて黒いような絵の真ん中付近に、ぽつんとスペースが空いていたらそこが目立つし、余白が多い絵の中に、局所的にびっしり質感とかが描き込まれた物があったらそれが目立って、余白は目立たなくなりますよね。
自分がその時描きたい絵の雰囲気に合わせて、何を、どれくらいの粗密で配置するのかを考えて描くのも大事なことです。
見せたいところを鮮やかにする
ここを見てほしい、という部分を、周囲より少し彩度を上げるのもおすすめの方法の一つです。
逆にあまり見なくてもいい部分の鮮やかさは少し落としてあげるとか、コントラストを弱くして目立たないようにするとか、あえて平面的に描いて、逆に見せたい部分の立体感を強調してやるのも良いです。
縮小した絵を常に表示しながら描くことのすすめ
絵を描くときに、キャンバスを縮小して全体を見られる状態のものを、実際に絵を描くキャンバスとは別にもう1枚表示しながら描くことをおすすめします。 クリスタならナビゲーションパレットです。
絵を拡大して狭い範囲を描き込んでいると、絵全体を見た時の色や光、見やすさのバランスが良いか悪いかに気付きにくいからです。私はキャンバスを小さく縮小した状態のものを常に右上に表示しながら描いていますし、絵の仕上げ段階になってくると、この小さいナビゲーターパレットの方を見ながら色の見え方の調整をすることも多いです。
まとめ
まとめなんてないよ!俺の他のイラストの記事でも見とけください。終わりー!