イラストがのっぺりした感じになって悩む人は多いと思います。
そもそも「のっぺり」って何?と調べてみますと、「平らで変化がなく、立体感や締まりがない」ということだそうで。確かに、絵を描くことを始めて間もない人のイラストを拝見しますと、そんな印象を感じることが少なくないです。
「のっぺり」の原因の一つである、立体感の無さを解消する方法として、光と影、明暗を表現しましょう、ということなどをテーマに、適当に思ったことを書いていきたいと思います。
絵の「のっぺり感」解消法いろいろ
まず最初に挙げる、初心者の人に特に多いものが、「絵のすべてをぼかしたブラシ、筆遣いで塗ってしまう」ということです。デジタルお絵描き初心者、あとは水彩画の始めたての人とかも、こうなりがちかもしれません。全体的にモヤモヤさせすぎて、絵の魅力が伝わりにくくなっていたり。
まだ形を上手く描いて表現する自信がないから、ぼやーっとさせてしまいたくなるんでしょう。気持ちは分かります。私も、形の表現で自信がなかったり面倒くさかったりするところは、あいまいに塗りつぶしたり、ぐちゃぐちゃーって塗ってしまいます。でも最初から上手いわけないのは当然なので割り切って、はっきりしたブラシで悩みながら色の境界を描いていった方が上達は早い気がします。
色と色の境界が曖昧になると、立体感が薄れます。凹凸が感じられなくなり、これがのっぺり感の大きな理由の一つになります。ぼかした塗りそのものがダメということではなく、実際にぼかしたようにグラデージョンになっている箇所だってあるし、でもぼかさずにハッキリ塗り分けた部分も必要で、使い分けが大事ということです。
にじみとかが魅力である水彩画でも同じで、上手い人の水彩画は、しっかりコントラストが効いた、エッジのはっきりした塗り分けがあって、凹凸、立体感を感じる部分と、あいまいに滲んだ部分が混在しているはずです。線画でくっきりした部分を強調してある場合もあります。
モノクロのイラストやペン画ならそもそも白黒なのでコントラストは強いと思いますが、そこにさらにトーンやカケアミ、ハッチングとかを使ってグレーも表現することで、立体感を増すことができるでしょう。
光と影を描きましょう なんとなくでもいいので光源を決めましょう
立体的に描くということは、光が当たっている部分と影になっている部分を描くということでもあります。凹凸の少なく感じる、平面的な絵も、それはそれで独自の魅力はあります。しかし一方で、特定の方向からの強い光源と、それによる濃い影のコントラストが、絵を見る人の目に留まりやすいのも事実です。
ちなみに平面的な絵も、上手な人は絵が退屈に見えないように、色々な要素が工夫してあると思います。ここではそこについては書きませんが(書けないともいう)、いずれ考えてみたいことではあります。
さて、光と影を描けと言われて、うーんと、右上から光が来ていることにするとここが暗くなって、赤が暗くなったらこういう色に変わって……みたいに難しく考えすぎて、尻込みしてしまう人もいるかもしれません。メインの光源の位置をある程度決めるのは大事ですが、部分的にその光源を無視した塗りになったって、いいんです。光源の位置を、イラストを見た人に印象付けるために、ある程度しっかり考えて塗る場所は必要ですが、適当に平面的な部分があったって大丈夫だと思います。
光も影も、なんとなくこんな感じかな?くらいの表現でも十分です。絶対に正しい必要はなくて、現実的には間違ってるであろう場所があってもOK。で、違っててもいいので、練習のつもりで大げさに明るい場所と暗い場所を作ってやるといいです。それだけでものっぺり感が減ります。光と影の境界をぼかしてもいいけど、ぼかしていない部分も作ってあげましょう。尖っていたり、カクっとした部分から、なんとなくで良いのでぼかさず塗る練習をしましょう。明暗付けすぎなくらいから、徐々に加減が分かってきて、ここはぼかした方がいい感じになるなとか、この材質のこの厚さならクッキリ塗り分けないほうがいいなとか、後からあいまいにする部分を作ってやる感じが、分かってくると良いです。
あとは、例えば前方から光が当たった感じのイラストを描こうと考えたとして、奥は暗く描こう、で、なんで前方が光ってるの?とか、そういうことは考えなくたっていいんです。前からの光が当たった絵が描きたいから描いたでいいんです。もちろん考えてもいいです。この方向からの光源なら、こっち側も光ってるのはおかしいだろ……とかいう他人からの声も、無視していいです。複数の光源があるのも普通だし、反射光なんだとか、こっちに懐中電灯持ったおっさんが立ってるんだとか言えばOKです。
赤色に光が当たったらこう、暗くなったらこの色とかも、現実と同じじゃなくてもいいです。現実的な塗りも混ぜてやると良くなることは多いですが、嘘が混ざっても良くなることはあります。例えば青空の下の影色はリアルなら青っぽくなることが多いでしょうが、別に自分が塗りたきゃ赤っぽい影色にしていいです。赤っぽい配色、影色でまとめたいからとか、単純に赤が好きだからとか、そういう理由で嘘をついていいんです。
ただ、リアルならどうなるのかを知っておくのは間違いなく武器になるので、嫌じゃなきゃ勉強したらいいと思います。光と影の描き方の本として有名なものに、「カラーアンドライト」という本がありますが、私もこれを買って読んだりしてみました。様々な種類の光と影によって変わる色の表現の仕方など、多数の作品を例にして、詳しく解説してある本です。とても面白く読めました。デジタル絵描きとしては、顔料とかの話はあんまり必要ないなと感じたりもしたので、似たことが書いてある他の本でもいいかもしれません。
あとは、いつものイラストのいろんなところに、ハイライトをちょんちょん、と入れるだけでもパッと見栄えが良くなると思います。簡単に言えば、つるつるのものに漫画的に丸い光を描いたりするアレです。やりすぎるとゴテゴテするので、目立たせたい部分、重要な部分だけに絞って、光らせる部分の材質などによって、自分の出来る範囲で形や濃さを考慮しながら、形にそってチョンチョンと線を引いてみましょう。慣れてきたら、少し描き方をリアルにしたり、見栄えの良い嘘のつき方を考えたりしましょう。
さらに慣れてきたら、ハイライトの反対側、影になる部分に反射光を入れてみましょう。ハイライトとは違う色で、例えば周囲の色に似た色とか、統一感を持たせたい色とかで。反射光を入れると立体感がさらに増します。逆にあまり目立たせたくないところには描かないとか、周囲の色に溶け込ませちゃうとかも良いと思います。
線画、実線を使うことでも、のっぺり感をなくそう
私のイラストもどっちかというと、雑な部分があることに因る、のっぺり寄りな部分も多い気がするんですが、それを薄めるために線画をグリグリしてあるのです。もちろん雑なだけという部分も多いですが、綺麗な一本ではない線の良さ、簡易的なスケッチの線の良さっていうのも私は好きで、それを自分の絵に取り入れたいと思っていて、強調したい部分の線画を強めることによって絵に凹凸を足すというか。インクだまりの表現とかも出来るといいですね。
私のような画風でなくとも、線の太さや勢いに変化をつけることで、のっぺり感の解消は期待できます。描く場所によって線の太さに変化をつけましょうというのは、よく言われていることですよね。
外側の輪郭線は濃くしましょうとか、手前の物体の線は太くとか濃くとか、強調したくない部分の線は薄くとか、そういうのです。
絵に締まりがない、というのは、線に締まりがないことが原因の場合も多いと思います。たいして何も考えずにただ線を色トレースして、単に薄い絵になってるだけ、というイラストも結構見かけます。線の色トレースがダメという気は毛頭なく、効果的に使えばいい絵になると思っています。黒くない線だからこそ良くなる部分だってあります。
しかし例えば、漫画家さんとかの白と黒の原稿の美しさ、さらにはそれに着色した時の美しさも、目を見張るものがあると思います。ペン画が上手な人の絵とかも。黒い線はパワーがあり、美しいのです。白い光もパワーがあって、美しいのです。水彩画とかも、紙の白も活かしましょうとか聞いたりしますよね。
例を挙げながらの解説など
自分の絵を例に出して、こんな感じで明暗を考えましたというのを解説してみたいと思います。

上の絵はドラゴンクエスト7の女戦士アイラのイラストです。光源はなんとなく上方から、という程度にしか決めていません。それくらい適当でも大丈夫ということです。
光が当たっているのを強調してあるのは、頭の上部分、顔、若干こちらに出てきている左右の髪の毛の先端、胸部の上の面の部分、ヘソまわり、剣の持ち手先端、ベルト付近といったところ。髪の毛の上部だけ、ハイライトの線を細くして、髪の毛感を出してあります。
影になる部分は、上に挙げた光の当たった部分が立体的に見えるように、光った部分のすぐ下あたりを暗めに塗ってあります。
首元は暗く、髪の毛の奥に引っ込んだ部分も暗くして、顔の周囲と髪の流れに立体感が出ています。
胸部の下部分を暗くするとともに、みぞおち付近の影の描き方によって、ほんの少し腰が前に出た姿勢、ヘソの凹みとその周りのおなかの肉のふくらみを表現してあります。
少し見えた太ももにも影を丸く足すことで立体感を出しました。
そして、左右の腕で塗り方が違っているのが分かるでしょうか。剣を持っている左腕は、濃く塗ってあります。左わきの下も暗くなっています。右腕はやや薄く塗ることで、微妙に絵に立体感、前後感を足してあるのです。実際の位置関係を考えれば右腕と左腕で、そんなに前後の違いは大きくないとは思いますが、絵として面白く見えるのを優先して大げさに塗ってあるわけです。左右の腕で色味も少し違います。ただし、右腕手袋だけは、髪を後ろにバサッと払っている動作を印象付けたいので、ほとんど薄くなっていません。また、払った髪の毛が多少長すぎるとも思うのですが、右手より払った髪の毛が上に来る方が分かりやすいので、長く描いてあります。
平面感をなくすという点では、コントラポストも意識して、両手先端、肩、腰などを、左右で高さや奥行きを変えるということも、考えて描いてあります。
上の絵でぼかした塗り方がしてあるのは、肌のふくらみに関した部分くらいで、その他でボケた部分は少ないと思います。
ただアイラが立っているだけの絵ですが、カッコよく、かわいく見せるために、光と影、明暗、姿勢を色々考えてあるのが参考にしていただけたら嬉しいです。

上の絵はオクトパストラベラー2の剣士、ヒカリというキャラのイラストです。背後に見える、燃え上がる城下町に戻ろうとするも、行く手をふさぐ敵と対峙したシーンを描いています。赤い左目とその周囲が暗いのは、彼の内包する陰の力が現れたものです。厨二っぽさが良いですね。
日没後、背後で燃える町を光源として逆光気味のイメージで描きましたが、リアルで考えたら、遠くで燃える町が一体どれほどの距離が合ってどれくらいの強さの光源になるか、厳密なことは考えていません。月明りがあるとしたらそれとのバランスも考えず、なんとなく光らせたいところを光らせて描いた、そういう絵です。ゲームを知らない人からしたら特にですが、夜に見えないかもしれません。
剣士ヒカリのライティングは逆光ぽくということで、円柱の真ん中が暗くなるようなイメージで、おおざっぱに左右を光らせる感じで塗ってあります。右腕などは、外側に近い部分は火のオレンジ、体の中心に近い部分は夜の青、その間は黒っぽくという感じで塗り分けてあるのが分かるでしょうか。
キャラを黒っぽく塗ったので、夜の闇に溶け込みすぎないように、遠景の城を青く塗り、城とキャラの間に描いた砂煙と、武器が墓標となって連なる部分の地面を明るく塗ってあります。
砂煙上部は手抜きも兼ねて平面的に塗り、キャラの立体感が目立つようにしました。地面の描写が透けて奥に暗い青を見せることで、なんとなく夜っぽい雰囲気を強めたいと思いました。
難しいのが、色を暗くすれば影になって奥に引っ込むかというと必ずしもそうではないところです。同じように、色を明るくすれば光って手前に来るかというと、そうとも限らないのです。
色を濃くすると物体は手前に来ているように見えます。淡くすると奥に霞んでいく感じになります。
淡くすると奥に霞むのに、白っぽくハイライトを入れたおかげで立体的にこっちに出て見えたりもします。
「濃くと黒くと暗く」、「淡くと白くと明るく」、それぞれ似た部分はあるのに、与える印象が似るとは限らないのが、なんか面白いですね。明度と彩度の具合や、周囲の色との兼ね合いでも変わるのでしょうが、「この影は濃くするのか黒くするのか暗くするのか」、「この光は淡くするのか白くするのか明るくするのか」、そこを悩んで考えるのが楽しいです。影を淡くとか、光を濃くとか考えたって面白いと思います。
このイラストだと、下半身の黒い部分が、顔や上半身よりも濃くなって目立ってしまったので、黒の上からグレーを重ねて、黒を少し弱めたりしています。腰のひらひらした布を、前側は濃く、なびいた後ろ側は薄くして、前後感が出してあります。刀の鞘の先は、奥に見せたいのでハイライトは控えめ、だけど濃いシルエットで塗って、少し存在感を出そうとか。
キャラの形などを美しく縁取ることも楽しいですが、光と影、明暗や遠近を考えて色を塗ることで、頑張って描いたイラストが更に生き生きとしてくるのを感じられるようになると、絵を描くのがもっと楽しくなるのではないでしょうか。